バックヤード探検ツアー ①
~東京大学 経済学部資料室 (経済学資料の保護と収蔵の工夫について)~
2022.03.31 Thu
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資料保存についての助言をいただいている東京大学経済学部資料室(詳しくはこちら)を見学させていただくことができました。
資料室は内容的に「図書館」「文書館」「博物館」の三者にまたがる資料を収集、整理、公開するとともに、歴史資料そのものへの史料学的研究や保存に関する調査・研究を進め、近世・近現代資料を後世に永く伝えるため日々活動を続けています。
今回は経済学部資料室 室長 小島浩之先生、助教 矢野正隆先生に、同室の保管の工夫について伺いました。
何を収蔵していますか?(所蔵資料)
資料室では取り扱う資料には、貴重図書、準貴重図書、特別資料(古文書、一次資料)、博士論文(経済学研究科分)などを収蔵しています。
また、利用の為の保存の課題に対してデジタルアーカイブの構築※を推進しております。2010年の開室から2018年度末までに約3万点の資料をデジタル化(約158万画像)したほか、約1万点の資料をマイクロフィルム化し順次公開する準備を整えています。
- デジタルアーカイブの構築※
- 例えば本が30,000冊あるとかさばるからマイクロフィルムにコマ数1,580,000画像にして保管
収蔵方法と工夫について教えてください(保管方法)
保管のキホン 5項目
05災害に備える
5項目についてもう少しだけ…
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01制御(環境条件や生物の侵入をコントロール)
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環境を整える
資料の物理的変化をより緩やかなものにする為、温湿度といった環境条件や生物の侵入をコントロール
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空調を整える
資料室は常に室温は22℃、湿度 55%を保つ様、空調を管理
フィルム資料を扱う「マイクロ室」では、室温15℃、湿度40%で管理
空気清浄器を設置しマイクロフィルム、マイクロフィッシュ※から発生する酢酸を除去し劣化を抑制- ※マイクロフィルム・マイクロフィッシュって何?
- 一般にマイクロフィルムはロールフィルム、マイクロフィッシュはカードからハガキくらいの枚葉フィルムに多数面で構成しているもの。
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清掃をする
資料保存において、生物による物理的被害は無視できません。総合的有害生物管理で最も重視されるのが衛生管理であり、これが対策の9割を占めるとも言われております。その第一歩として養分となるホコリ、汚れを除去し、清潔に保つ工夫※が行われています。
- 実際の資料室の中の写真のように棚を活用し、「資料を床面に直置きしない」「ホコリの溜まりやすいところを作らない」資料のクリーニングを行う事で害虫やカビからの回避をおこない、また虫の侵入を防ぐため、出入口は二重扉とし、粘着トラップの設置を行っております。
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環境を整える
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02文書の調査(適切な保存管理を行う為、対象物の特性を知る)
保存するにあたり修理が必要なのか、棚に納める際の適切な置き方を考慮
例えば・・・-
和物の文書の保管
自立できない書物(薄い資料や柔らかい資料等糸で綴じた和製本が主)は、フォルダに入れ保管。
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ホッチキス止めしてある文書
金属の腐食は資料劣化の要因となります。ホッチキスの付いた文書は1つ1つ丁寧に取り外し、保護紙(保存性に優れた紙)で表紙を作り、文書を糸で括り直して立て掛けられる様に工夫をしています。
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マイクロフィルムの保管
サイズが同一の為、専用の箱に保管。さらにマイクロフィルム1巻ごとに、AFハードボードで作製した箱に収納している。
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和物の文書の保管
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03優先順位をつける
毎年資料は増え続ける状態であり、処置の種類と順序を適切に選択する必要があります。
資料の保存ニーズだけでなく、人員・予算・他業務との関係といった資源配分を考慮し処置の優先順位をつけます。 -
04処置をする
劣化した資料はアーカイバルボードを使用した容器に収納する事で、酸性ガス・光・汚れなどから資料を保護します。
修復・劣化した資料は修復も行います。合わせて、劣化した資料を媒体変換する事で内容情報(コンテンツ)を図書館資料として利用できる様にします。貴重書の場合、閲覧と保存の媒体を分けて管理します。-
保存箱に入れる
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棚に収める工夫
資料の形は様々。限りあるスペースに無駄なく収蔵する工夫が施されております。書物のサイズはさまざまな為、洋紙寸法(A列、B列)に収まらない場合があります。同館では変形サイズの文書について独自で箱を作製しスペースに収めております。
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保管した物をトレース出来る工夫
保存箱にラベルを貼付、及び管理番号を記載し、パソコン端末で何が、どこに収蔵されているのか検索できる様な工夫をしています。
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媒体を変換する
対象物をデジタル化する変換室を併設し図書館資料の利用を推進しております。
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保存箱に入れる
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05災害に備える
地震、火災、水害などの災害では、資料への直接的な被害に加えて、関連業務全般の機能不全や利用者など図書館の構成員以外への影響を考慮に入れた対応が必要です。ヒトの安全を第一とし、柔軟な判断・対応が求まられます。
今後の課題について教えてください
寄贈された文書、自治体からの依頼により収蔵依頼の書物など、保管が必要な文書は日々増え続けている現状です。
後世に少しでも文書を残すためにも効率よく作業を進める事が求められております。
この度は、貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。
当社商品を通し、保管が必要な文書を後世に残すお手伝いに貢献していきたいと思います。
- 東京大学経済学部資料室 概要
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東京大学経済学図書館が所蔵する貴重な原資料を保存・管理するための施設です。
収蔵品は企業資料、労働資料、行政資料や古文書をはじめとし、古典籍、古貨幣など博物資料に及びます。
資料室は内容的に図書館、文書館、博物館の三者にまたがる資料を収集、整理、公開するとともに、歴史資料そのものへの史料学的研究や保存に関する調査・研究を進め、近世・近現代資料を後世に永く伝えるため日々活動を続けています。
1900年法科大学内に図書館の前身である経済統計研究室が組織され、1913年に法科大学内に資料室の前身である商業資料文庫が組織されました。約一世紀に渡り幾多の変遷を経て、2010年2月に東京大学 資料室へ移転しました。