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4挿入法による試験結果保存用紙・容器に求められる条件は、劣化要因から資料をまもるだけでなく、素材自体が資料を傷めないことである。(a)チューブ法 (ISO 5630-5)束にした試験片をガラスチューブに入れ、蓋をして完全密閉し、これを100℃のオーブンに5日間入れておく方法。(b)挿入法特種東海製紙が開発した試験方法。pHの異なる紙で製本した束の中に試験片を挟み込み、80℃80%RHの環境に一定期間入れておく方法。ピュアマット参考文献ISO5630-5 Paper and board –Accelerated ageing- Part5: Exposure to elevated temperature at 100℃『挿入法による中性紙の見直し』 http://www.hozon.co.jp/cap/con-con/archives/nakano021018.pdf■強制劣化試験紙の寿命を調べる方法変色の原因となるリグニンを含まず、セルロース含有率が高いパルプ。古紙パルプなどは不純物の混入が避けられないので不可。酸性紙の原因となる硫酸アルミニウムを含まないこと。中性のサイズ剤を使う。保管環境や紙の内部(セルロース)から生じる酸の中和剤として炭酸カルシウムなどの填料を加えること。pHは中性~弱アルカリ(7~9)を示す。アルカリに弱い資料を保護する場合は、ノンバッファー(アルカリを含めない)紙を使うこと。他社製品(a)チューブ法紙の内部から発生する酸性物(劣化要因)による影響を調べることができる。(b)挿入法挿入法による強制劣化試験は、東京農工大学、東京藝術大学との共同研究である。pHの異なる紙同士が長期間接触した場合のお互いの影響を調べることができる。左の写真は、最上段が「劣化前」、2段目が「酸性の本文用紙(pH5.6)」、3段目が「中性の本文用紙(pH7.0)」、最下段が「アルカリ性の本文用紙(pH9.3)」にはさんだ結果である。左列のピュアマットは、pHの異なる本文用紙と長期間接触していても、変色やpHの変化が少なかった。中と右の列は他社製品で、変色やpHの変化が大きかった。強制劣化試験           ある温度と湿度の中に紙を置いて、日常ではありえない環境をつくり、紙の寿命を調べる方法。他社製品劣化前本文用紙pH 5.6本文用紙pH 7.0本文用紙pH 9.3化学パルプアシッドフリーアルカリ残留3つの条件保護保存用紙

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