貴重な資料を未来へ
50/54

48① 万が一の場合に修復前の状態に資料を戻せるようにすること。たとえば、原物資料に裏打ちをする場合に水溶性の接着剤を使うなど。② 資料に対して安全な材料や方法であること。③ 可能な限り資料の原型を維持すること。④ 修復の記録を残すこと。現在適用している技術への過信を改め、可能な限り資料の破壊を防ぐという考え方がもとになっている。保存修復の四原則Principles of conservation and preservation資料の保存修復するときに、将来的な再処置なども考えて、念頭に置くべき四つの原則。① 可逆性の原則 ② 安全性の原則  ③原型(原形)保存の原則 ④ 記録の原則である。ポリエステルPolyesterポリエチレン・テレフタレートの通称。PETと略す。無色透明で耐伸長性、化学的安定性に優れる。フォルダーやエンキャプシュレーション、図書のジャケットや接着テープなどに使われる。ポリエステルは表面塗工や添加物のないものに限る。ポリエチレンPolyethylene純粋なポリエチレンは化学的安定性にすぐれている。写真保存の透明封筒などに使われる。ポリ塩化ビニールPolyvinyl chloride「塩ビ」、「PVC」と略す。ほかのプラスチックとくらべ化学的な安定性が低く、セルロース物質を劣化させる酸性成分を放出する。PVCは柔軟性を出すために可塑剤が添加されており、図書資料の劣化要因にもなり、長期保存には向かない。ポリプロピレンPolypropylene純粋なポリプロピレンは化学的に安定している。写真資料の保護のためのフォルダーや透明封筒などに使われる。マイグレーションMigration資料保存の分野では、酸の移行のことをいう。電子記録の場合は、データの媒体変換のこと。マイクロフィルムMicrofilm露光し現像処理してある、高い解像力をもつロール状のフィルム。オリジナルを縮小して画像にしている。1990年代以前はTAC(トリアセテート)ベースフィルムが使われていたが、数十年でビネガーシンドローム(酢酸による自壊現象)が発生することがわかり、以後PET(ポリエステル)ベースの化学的に安定したフィルムを使うようになった。三椏紙(みつまたがみ)Mitsumata-gamiジンチョウゲ科の落葉低木のミツマタを原料とした紙。繊維は、細く柔らかく光沢があり、印刷に適した紙である。美濃紙(みのがみ)Mino-washi平安時代(794年~)に始まった美濃(岐阜県)産の和紙。おおよそ縦27cm、横39cmの美濃紙を二つ折りにした美濃本が和本の基準となった。美濃紙は障子紙の最高級品として有名であるが記録用紙としても使われてきた。明礬(みょうばん)Alum 亜硫酸アルミニウム溶液に硫酸カリウムを加えたアルミニウム・カリ明礬をいう。膠(にかわ)と混ぜて和紙のにじみ留めなどに使う。無酸紙Acid-free paperインキのにじみ留めに使われるサイズ剤の定着に硫酸アルミニウムを使わない紙。pHが中性域(7.0位)もしくはアルカリ寄りの紙をいう。酸性のサイズ剤を使っていなくても、原料パルプにリグニンなどの不純物が入っている紙は無酸紙とはいわない。虫干し(爆涼 ばくりょう)Mushiboshi, airing資料を日陰干しにして風を当て、カビや虫の害を防ぐこと。伝統的には、春や秋の晴れた湿度の安定した時期に実施した。メンディングテープMending tape半透明で目立たない粘着テープ、中性紙箱やフォルダー作成などに用いる。粘着剤はアルカリ性が望ましい。セロファンテープより劣化しにくいが、粘着剤を除去するのが困難なため、資料に直接使用するのは避けること。Terminology用 語 集

元のページ  ../index.html#50

このブックを見る