貴重な資料を未来へ
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47pHPower of Hydrogen水溶液中の水素イオン濃度を示す。pHは7.0を中性と呼び、値が7より小さくなると酸性、大きくなるとアルカリ性という。冷水抽出法(coldwater extraction)による測定が一般的である。(JIS P-8133)化学的には、水溶液中で水素イオン(H+)を形成する物質のこと。紙や板紙、布などのセルロースは酸を触媒とする酸加水分解により劣化する。もともと、紙に含まれている場合もある。他の酸性物質や大気汚染物質から移行することもある。   フィルムの劣化(写真の)Causes of deterioration(photographs)写真材料自体・現像条件・保存環境の3つの要因により劣化する。高温・高湿の環境、支持体の加水分解、不十分な水洗、光による退色、酸性ガスの影響などがある。フォクシングFoxing紙の変色。しばしば褐色を帯びたシミや小さな黒点として現れる。カビ説や金属成分の腐食説などがある。蒸け(ふけ)Huke紙が水濡れや湿気によって劣化し、繊維の結合が破壊されていきフワフワとした綿状になる現象。ブックシューBook shoe辞書や事典など、大型本などの製本構造の破損を防ぐための中性紙ボード容器。本に靴をはかせるような仕組みから名前がついた。プリザベーションPreservation図書館や公文書館の原物資料の保存と中身の情報を残すための方法。保管や配架の基準、職員の配置、保存政策や技術などの管理、財政的な考慮を含む一切の手続きのこと。ブックキーパー法Bookkeeper deacidification process液相法の一種で、酸化マグネシウムの微粒子を分散させたフルオロ・カーボンの処理液に紙資料を浸して中和させる方法。アメリカのプリザベーション・テクノロジーズ社が開発、日本のほかオランダ、ポーランド、韓国などで稼働。文化財保護法Laws for protection of cultural property日本の文化財保護の統一法。1950年に制定された。1996年に改正され、重要文化財などの活用促進、建物の文化財登録制度などが導入された。ペーパースプリットPaper split紙の修復技法の一つ。一枚の紙を表裏二枚に剥ぎ、間に和紙などの薄手の補強紙をはさみ、再度貼り合わせる方法。伝統的には相剥ぎ(あいはぎ)という。酸性劣化しもろくなった資料などに適用する。保存科学Conservation science保存環境の整備や制御、材質とその劣化機構を研究領域とする。伝統的な修復や保存技術についても科学的な裏付けをした上で適用していく。保存管理者Preservation administrator資料の保存機関で、資料保存に関する業務の運営担当者のこと。保存環境の管理から保管方法、保護措置、保存処置などの手法の決定や人員の配置、予算の確保など全般にわたる保存計画の立案執行を担当する。保存額装Conservation framing , preservation framing美術品を装着するヒンジやマットボードをはじめ、テープやフレームなどは作品を物理的に保護するとともに、悪影響を与えないものを使う。2枚のマットボードを中性テープでつなぎ、一方を窓抜き、もう一方を台マットにする。これをブックマットと呼び、作品に直接触れずに移動でき、展示が終了したら、額縁から取り外しブックマットごと保存箱に収納できる。保存額装は作品を効果的に見せるとともに、劣化要因からもまもる機能がある。Terminology用 語 集

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