貴重な資料を未来へ
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46樟脳(しょうのう)Camphorクスノキを蒸留して得られる白色透明の結晶。独特の香気があり、古くから防虫剤として利用されてきた。大量に使うと樟脳焼けで資料を傷める。防虫剤「パラジクロロベンゼン」と併用すると溶解し資料を汚染する。少量脱酸Mini deacidification大量脱酸に対する言葉で、従来の手作業による脱酸法のこと。一般的には水性脱酸法が適用される。マグネシウムやカルシウムなどの化合物の水溶液を使い中和させる。真空凍結乾燥法Freeze drying, vellum-freeze drying水濡れした紙資料を修復する方法で、フリーズドライ法ともいう。温度を制御した高度な真空装置によって、水による損傷を最小限にくい止める手段。氷点下40度以下で急速冷凍したものを真空状態に入れると、氷が水にならずに一気に水蒸気になる現象を利用することで、水にぬれた文書類の損傷を防ぎ、きれいに乾燥できる。地震や水害などで大量に被災した文書を救出する最も有効な方法の一つ。接着テープAdhesive tape紙や布、その他シート状の基材に接着層を持たせたもの。圧着型のテープは長期保存の資料に適用することは避けなければならない。長期には接着剤が劣化、黄変し、資料に付着したまま取れにくくなる。段階的保存Phased preservation大量の資料群全体の保存を考えるにあたって、まずサンプリング調査など概要調査をした上で資料の状態をデータ化し、処置の優先順位を決定する。計画的な保存プログラムによって段階的に保存処置をしていく方法。脱酸Deacidification将来、劣化の進行が予測される酸性紙にアルカリ物質を入れ、紙を延命させること。一点ずつ処置する少量脱酸と複数の紙資料をまとめて処理する大量脱酸がある。アルカリを入れるには、水溶液またはガスを使う方法がある。日本の大量脱酸では、ドライアンモニアと酸化エチレンを脱酸剤としたDAE法と酸化マグネシウムを使ったブックキーパー法が稼働している。炭酸カルシウムCalcium carbonate 、CaCO3炭カルともいう。石灰岩を原料とした物質。安定したアルカリ物質のため、紙中に入れて中性紙化するときに用いる。中性紙Neutral paper 日本では明確な定義はないが、国立国会図書館では、pH6.5~10位までの紙を中性紙と呼んでいる。pHの値は0~14まであり、7.0近傍を中性と呼び、数値が高くなればアルカリ性、低くなれば酸性という。国会図書館の蔵書受入調査では、1988年の民間出版物の中性紙化率が8.8%だったが、2008年の調査では、95%を超えている。ドライアンモニア酸化エチレン法DAE method気相による大量脱酸法。アメリカで開発され、日本で改良された。真空にした脱酸装置にアンモニアガスを注入後、酸化エチレンガスを浸透させて生成したトリエタノールアミン類により紙の酸を中和する方法。本を解体せずにまとめて処理できる。ドライクリーニングDry cleaning資料の表面に付着しているホコリなどの汚れを水や溶剤を使わずに、刷毛や粉末消しゴムなどで除去する方法。バッファーBuffer / buffering緩衝剤、緩衝作用のこと。アルカリ緩衝剤を含ませることをアルカリバッファーといい、保管環境からの酸を中和する働きがある。パーマネントPermanent長期の保存に耐えられること。アーカイバル(archival)と同義語。パラジクロロベンゼンPara dichlorobenzene防虫剤の一つ。白色透明の結晶で、昇華しやすく独特の芳香がある。気体は空気よりも重いため、資料の上に配置し、直接触れないようにすること。スチロールを溶かすので、紙以外の資料は確認が必要。樟脳と併用すると、溶解し資料を汚染する。Terminology用 語 集

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