貴重な資料を未来へ
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酸Acid化学的には、水溶液中で水素イオン(H+)を形成する物質のこと。紙や板紙、布などのセルロースは酸を触媒とする酸加水分解により劣化する。酸性紙のように、もともと紙に含まれている場合もある。他の酸性物質や大気汚染物質から移行することもある。45殺虫(剤)Pesticide資料の害虫を化学的・物理的に駆除する方法。化学的には防虫剤や殺虫剤、物理的には熱や圧力、粘着剤などを利用する。昆虫が生息できないように、環境条件を脱酸素にしたり、虫干しをしたりする方法もある。殺菌Germicideカビなどの菌類を化学的・物理的、または環境整備によって駆除すること。酸化Oxidation酸化とは物質が酸素と化合するか、水素を奪われるか、あるいは、電子を失う反応をいう。たとえば、鉄が腐食することが挙げられる。酸性紙Acidic paperpHが酸性を示す紙。近代の洋紙の製造工程において、にじみ留めのサイズ剤(ロジン)の定着に硫酸アルミニウムが使われた。紙中に残留する硫酸アルミニウムは、長い年月で空気中の水分や紙の中に含まれる水分などと化学反応(加水分解)を起こし硫酸になる。硫酸には強い脱水作用があり、紙の水分が失われていき、最終的にはボロボロになってしまう。酸性劣化Acid deterioration紙やフィルム類に含まれる酸性物質や環境因子などによって、化学的に劣化していくこと。酸の移行Acid migration酸性紙や酸性物質に資料が長期間接触していると酸が移行する。ジエチル亜鉛法DEZ process米国議会図書館が開発した気相による大量脱酸法。火災発生によるプラントの爆発事故などが原因で、事実上の開発中止になっている。紫外線Ultraviolet Light(UV)可視光線よりも波長が短く、高いエネルギーをもつ電磁波。紫外線は絶えず資料を劣化させ、変色や退色の原因になる。太陽光だけでなく一般の蛍光灯からも紫外線は発生している。紫外線防止フィルムUltraviolet filter filmプラスチック素材に紫外線吸収剤を混入させたり、紫外線を吸収する皮膜を貼り合わせたフィルムなどがある。採光窓などに貼り、効果を発揮する。種類によって吸収率が異なり、製品に寿命があるため、定期的に交換が必要。額縁のアクリルガラスにも紫外線をカットする製品が出ている。蛍光灯に巻く、透明なチューブ状の製品もある。また、蛍光灯自身が紫外線を出さない、文化財用に開発されたものもある。アルカリ紙Alkaline paperpH値が7ないしそれ以上の紙。紙の中に炭酸カルシウム(CaCO3)などの物質を残留させることによって、アルカリ寄りにする。硫酸アルミニウムのような酸性物質が含まれていても、炭酸カルシウムを入れることにより中性ないしアルカリ性の紙ができるが、長期保存に使われる紙にはすすめられない。写真の保存Preservation of photograph写真劣化の主要因は、温湿度、光、ホコリ、大気汚染、保存用品などであるが、現像処理方法や基材による劣化もある。種類によって画像の堅牢性に大差があり、一部のカラー写真には色素が退色しやすい製品もある。修復Conservation and Restoration資料の傷みを治すこと。紙の場合は、伝統的な裏打ちや近年の技術「漉き嵌め(リーフキャスティング)」などがある。資料に手を加える際には、「保存修復の四原則」に留意して適用する。蒸解(じょうかい)Cooking紙原料を薬品を用いて加熱処理し、パルプ化すること。木材チップの場合は、リグニンの除去が主目的である。和紙の場合は「煮熟(しゃじゅく)」という。生麩糊(しょうふのり)Jin shofu水溶性のため、資料の修復に使われる。小麦粉のでんぷんから作る糊。粉を水で溶き、かきまぜながら半透明になるまで熱を加え、冷ましてから濾(こ)したもの。用途に合った濃度に薄めて使う。腐りやすいので、作り置きはできない。Terminology用 語 集

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