貴重な資料を未来へ
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43化学的に安定Chemical stabilityある物質が化学的には容易には分解されず、変化を起こしにくい性質をもつこと。プラスチック素材では、ポリエステル(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などが推奨されている。化学パルプChemical pulp木材を薬品で蒸解して作ったパルプで上質紙に使われる。不純物質であるリグニンを除去しているので、紙にした時に変色劣化が少ない。可逆性の原則Reversibility保存や修復処置において、元の状態に戻せるようにするという原則。最も良いとされる修復技術でも、将来見直しされたりさらに優れた技術が登場した際にやり直しができるようにすること。加水分解Hydrolysis水との相互作用により有機化合物が分解すること。分解反応は分子結合を弱めたり壊したりし、物質の脆弱化や退色を引き起こす。酸性紙の場合、空気中の水分や紙に含まれる水分と酸が反応して自壊していくことがわかっている。カビMoldカビの胞子は大気中や資料の上に常に存在し、温湿度環境が整えば、いつでも発芽し、成長、増殖する。一般的に温湿度が低いと発生しにくい。カルボキシメチルセルロースCarboxy methyl cellulose(CMC)植物の主成分であるセルロースから製造した白色の粉末。水溶性、吸湿性がある。無味・無臭・無害といわれており、粘性があるため修復の際のラベルの貼付などに使う。可逆性があり、乾燥後も水で湿らせれば剥離できる。環境調査Monitoring資料の劣化を促進するような要因を調べること。具体的には、温湿度や光、害虫、カビなど。ほかにも汚染ガスの測定もある。感熱コピーThermo graphic copy画像の定着に熱を利用するコピー方法。用紙は感熱記録紙という。高熱にさらされると変色する。長期間では画像が消失してしまうため、保存性は良くない。貴重な資料は媒体変換し、オリジナル資料は光が当たらぬように中性紙保存箱などに収納保存する。雁皮紙(がんぴし)Gampi-paperジンチョウゲ科の落葉低木のガンピを原料とした紙。鳥子紙(とりのこがみ)などともいう。繊維は細く短く、平滑で光沢のある紙ができる。栽培が難しいため、野生のものが採取される。機械パルプGround pulp、mechanical pulpGPと略す。木材をそのまま磨砕して作ったパルプ。木質部をそのままパルプ化するため歩留りがよいが、リグニンが含まれているため、変色しやすく耐久性がない。新聞紙や下級紙に使われる。強制劣化試験Accelerated ageing test紙の強制劣化試験の多くは、高い温湿度に紙をさらし、紙の外観や強度変化を調べるというもの。ASTM(米国材料試験協会)は「密閉試験管法」を開発し、自然劣化にもっとも近い方法といわれている。* 試験紙は、実際に自然劣化した紙資料を分析し、同じ作り方で再現したものを使用。これを試験管の中に入れ、100℃で5日間強制的に劣化させる。自然劣化した紙と強度残有率(耐折強さや引き裂き強さ)、有機酸(蟻酸や酢酸など)を比較し、耐久性を判定する。*ISO5630-5を参照局紙Japanese vellum明治時代(1868年~)初期に、大蔵省紙幣抄紙局で作られた紙。主原料は三椏(みつまた)。平滑で強く、紙幣や証券用紙、印刷用紙などに使われた。銀塩フィルムSilver halide film画像の形成に、乳剤をかけ感光性のあるハロゲン銀分子を使用した写真フィルム。高い温湿度や光などで劣化する。酸や強いアルカリにも弱いため、ノンバッファー紙などで保護する。写真保存にはPAT試験(Photograph Activity Test)をパスした材料を使うこと。Terminology用 語 集

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