貴重な資料を未来へ
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42間紙(あいし 合紙)Interleaving紙などの材料で資料を劣化要因から隔離して保護する。衝撃や光、汚染などの物理的劣化要因から遠ざけること。酸性資料の間にアルカリ緩衝剤を含んだ紙をはさみ、酸の移行を防ぐ。アルカリに弱い描画材料や写真資料に直接触れる場合は、pHが中性に近い間紙を用いる。IPM(総合的有害生物管理、総合的害虫管理)Integrated Pest Management虫を入れない、繁殖させないなどの予防的処置。環境調査をして、保存環境を整えること。トラップを仕掛け害虫の有無を調べることから始まる。やむをえない場合には燻蒸する。アクリルAcrylics透明性や耐候性、色の堅牢性などに優れたプラスチック。化学変化に強いため、資料の保存材料に採用されている。たとえば、紫外線を吸収するアクリル板は額縁のガラスや展示ケースの材料などがある。アクリルはシートやフィルム、接着剤にも使われている。アルカリAlkali水溶液中に水酸化イオン(OH-)を形成する物質を指す。アルカリ成分は、紙の中に存在する酸を中和したり、将来発生するおそれのある酸から資料を保護するアルカリ緩衝剤の役割も果たす。アルカリ・リザーブ、アルカリ・バッファーなどという。薄葉紙(うすようし)Thin paper, tissue paper本来は、雁皮紙(がんぴし)を薄く漉いた紙。懐紙(かいし)や包装紙に使われてきた。現代では、木材パルプを使った薄葉紙も登場している。資料や作品に直接触れるため、中性紙が条件である。裏打ちBacking, lining書物、文書などの本紙に補強紙を貼って裏面から強化すること。ウィーン法Vienna methodオーストリアの国立図書館が開発した技術。脱酸と紙強化を組み合わせた方法。水酸化カルシウム水溶液にメチルセルロースを加えた液に、本を浸漬する。水酸化カルシウムで脱酸、メチルセルロースが紙葉に薄い膜を形成して紙を強化する。凍結乾燥技術を使用することにより、合冊された新聞などを解体することなく、そのまま水性脱酸を行い、同時にセルロースエステルによる含浸強化ができる。ウェイ・トー法Wei T'o process液相による脱酸法。カナダ国立図書館/公文書館が採用している。マグネシウム・アルコラートの誘導体を使用し、アルコールと代替フロンを溶剤としている。書籍を解体せずに処置することができる。スプレーや刷毛で塗布する方法もある。エンキャプシュレーションEncapsulation紙やシート状の資料を保護するために他の材料で封じ込めること。通常は、2枚の透明なポリエステルシートの間に資料をはさみ、四辺をシールする。新聞紙など両面に情報が載っていても読める。酸性紙資料は、そのまま閉じ込めると劣化が促進されるため、あらかじめ脱酸してから封入する。資料を安定した状態に保つため、アルカリ性の緩衝紙や板紙を一緒に挿入することもある。塩化ビニールPolyvinyl chloride、PVCポリ塩化ビニールの通称。プラスチック素材として耐水性、耐溶剤性などの特長があるが、柔らかさを出すための可塑剤が劣化の要因となるため資料の保存には向かない。資料保存に使える安全なプラスチック素材は、ポリエステル(PET),ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP)の3種類が推奨されている。汚染ガスPollutant gas資料を劣化させるガス。代表的な汚染ガスは次の5つで、東京国立博物館が許容濃度を発表している。(暫定値)カイル・ラッパーKyle Wrapperアメリカの修復家ヘディ・カイルが考案した中性紙容器。構造がシンプルで、厚さ1.5 cm以下の薄い資料の保管に向く。大気からの酸や光、ホコリなどから資料をまもる。ホルムアルデヒド HCHOアセトアルデヒド CH3CHO酢酸 CH3COOH蟻酸 HCOOHアンモニア NH3車の排気ガスや打ち立てのコンクリート、内装建材や塗料、木製の収納家具や容器、展示台、清掃用の洗剤などから発生することがある。東京文化財研究所美術館・博物館のための空気清浄化の手引きより80ppb以下30ppb以下170ppb以下10ppb以下30ppb以下Terminology用 語 集

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