紙に関すること: 2011年3月アーカイブ

hyakumanntou138.jpg

紙の博物館の機関紙「百万塔」第138号(2011228日発行)に安江明夫氏が「書籍を変革したコンサバター」を寄稿しています。安江氏は元国会図書館副館長で学習院大学非常勤講師です。

 

コンサバター(保存修復家)のウィリアム・バロー(1904-1967、以下バロー)は近代の書籍用紙の寿命の短さや問題の規模を予測し、紙中の酸性成分が原因であることを50年以上前に報告書にしました。彼は、紙の酸性化の原因を突き止めるだけでなく、酸性紙にアルカリ成分を加えて中和させる「脱酸」やパーマネント・ペーパー(耐久性の高い用紙)も開発。

 

バローが1959年と1960年に出した報告書を契機に、1985年に米国国家規格「印刷図書館資料のための紙の耐久性」(ANSI Z39481984)に制定され、その後のISO規格にも反映されています。

 

中性紙の普及に果たしたバローの業績や、国家規格に制定されるまでの米国議会図書館副館長(当時)のバーナー・クラップや図書館振興財団第3代理事長のワレン・ハースらの功績にも安江氏は触れています。日本では、米国の経緯をもとにして1982年に日本書籍出版協会の職員であった金谷博雄氏が『本を残す―用紙の酸性紙問題資料集』を自費出版し、酸性紙問題がマスコミなどで取り上げられ、今日の中性紙の普及につながっています。

 

「中性サイズ剤の開発もパーマネント・ペーパーの概念確立もアメリカの先人達の努力の賜物である。それらの努力がなければ日本での進捗は有り得なかった。この点は肝に銘じておきたい。」と、論文の中で安江氏は述べています。

 

バローの報告書は下記の2冊で、金谷博雄氏の『本を残す―用紙の酸性紙問題資料集』とともに紙の博物館図書室に収蔵されているそうです。(文責 神谷)

 

"Deterioration of Book Stock. Causes and Remedies. Virginia State Library, 1959"

"The Manufacture and Testing of Durable Book Papers. Virginia State Library, 1960"

 

紙の博物館:

http://www.papermuseum.jp/

 

機関紙「百万塔」は年3回発行。定価700円、送料210円です。

http://www.papermuseum.jp/shop/book.html

 

 

| | コメント(0) | トラックバック(0)
株式会社TTトレーディング
デジタルもんじょ箱トップへ

最近のトラックバック