
文化財が傷んだり失われた場合にはオリジナルに忠実な修復や復元が求められます。文化財を伝える専門家がどのようにオリジナルに向き合っているのか?なぜオリジナルを求め続けるのか?どのように伝えていくのか?
本書は、2008年12月6日(土)~8日(月)3日間にわたり開催された第32回文化財の保存及び修復に関する国際研究集会「"オリジナル"の行方―文化財アーカイブ構築のために」の報告書です。
一日目は中国古書蹟をはじめ水墨画、浮世絵、写真、現代美術などの文化財関係者からの発表と討議、二日目は、オリジナルの概念について建造物や曼荼羅、観音像、古典芸能など広い分野からの報告と討議がありました。最終日は、敦煌文書や美術史学、文化財アーカイブ構築、屋外彫刻ななどの発表とともに総合討議が行われました。
「オリジナル」という言葉には、当初の姿や原型、本物、真正、独創性、唯一性などの意味合いがあります。オリジナルの捉え方は研究の分野や文化財のジャンルによっても違いますが、さまざまな立場の研究者からオリジナルに迫る多様な発表がなされています。(文責 神谷)
『"オリジナル"の行方 文化財を伝えるために』
東京文化財研究所 編
ISBN978-4-582-21304-1
2010年3月8日発行
A5判、376p
平凡社
定価:3,500円(税別)
研究集会のプログラム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2008年12月6日(土)
開会挨拶
基調講演1 モノより思い出、思い出よりモノ 塩谷純(東京文化財研究所)
セッション1:モノ/"オリジナル"と対峙する
発表1 二点の中国古書蹟における光学調査 何傳馨(國立故宮博物院)
発表2 室町時代狩野派扇面画の"オリジナル":宋画との関連 マシュー・P・マッケルウェイ(コロンビア大学)
発表3 肉筆浮世絵と浮世絵版画:浮世絵研究者にとってのオリジナル 浅野秀剛
(大和文華館)
発表4 写真―オリジナルという認識の共有 岡塚章子(江戸東京博物館)
発表5 現代美術とオリジナル 松本透(東京国立近代美術館)
セッション討議 司会:相澤正彦 (成城大学)山梨絵美子 (東京文化財研究所)
2008年12月7日(日)
セッション2:モノの彼方の"オリジナル"
発表1 「おじいさんの斧」:日本文化史におけるオーセンティシティと再生―宇治橋を例に タイモン・スクリーチ(ロンドン大学SOAS)
発表2 『諸説不同記』と「現図」胎蔵曼荼羅 津田徹英(東京文化財研究所)
発表3 燈明寺(東明寺)「六」観音像をさぐる シェリー・ファウラー(カンザス大学)
発表4 古典芸能の伝承と変遷:人形浄瑠璃文楽の場合 飯島満(東京文化財研究所)
発表5 雪舟というオリジナルな存在:作家論の功罪 綿田稔(東京文化財研究所)
発表6 仏像の修理・修復:サンフランシスコ・アジア美術館の脱活乾漆像をめぐって 皿井舞(東京文化財研究所)
発表7 更新のオーセンティシティ:木造建築におけるオリジナル 清水重敦(奈良文化財研究所)
セッション討議 司会:勝木言一郎 (東京文化財研究所) 森下正昭 (東京文化財研究所)
2008年12月8日(月)
基調講演2 オリジナルとその保存:文化財アーカイブの可能性と限界 加藤哲弘(関西学院大学)
セッション3:"オリジナル"を伝えること
鼎談 敦煌文書とアーカイブ 赤尾栄慶 (京都国立博物館) マーク・バーナード (大英図書館) 中野照男 (東京文化財研究所)
発表1 サー・ロバート・ウィット・ライブラリーと矢代幸雄の美術研究所構想 山梨絵美子
(東京文化財研究所)
発表2 遊興文化の残映:彦根屏風の光学調査と情報化 江村知子(東京文化財研究所)
発表3 屋外彫刻調査保存研究会の活動について 田中修二(大分大学)
総合討議 司会:佐野みどり (学習院大学) 田中淳 (東京文化財研究所)
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