2008年11月アーカイブ

 19回保存フォーラムの参加レポート

 国立国会図書館は、2008911日に第19回保存フォーラムを開催しました。

ndlforum.jpg

 

テーマは、「害虫を入れない・増やさない-図書館における有害生物管理-」で東京文化財研究所生物科学研究室長の木川りか氏と国会図書館収集書誌部資料保存課の宇野理恵子氏が講演と事例報告をしました。

プログラムは、

講義「図書館における総合的有害生物管理(IPM)とは-概論と取組の実例」 木川りか氏

報告「国立国会図書館におけるトラップモニタリング調査報告」 宇野理恵子氏

 

 

筆者(神谷)は、フォーラムの報告を再構成しレポートします。

レポートはA4、7pPDFファイル(88kb)です。

: ndl_trap_moniter.pdf

概要は下記の通りです。 

木川氏の講義

■文書に被害を与える害虫とは?

■伝統的な虫菌害防除法からIPM

■海外の例

■国内の事例

■北米の自然史博物館における事例

■モニタリングのポイント

■対処のポイント

■代表的な燻蒸剤

■蒸散性防虫剤

■有害生物対策を館内に浸透させるために

宇野氏の報告

■トラップモニタリング調査とは

■調査の動機と目的

■調査内容

■捕獲結果は?

■全体の考察

■提言

 

 

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大原社会問題研究所の事例報告

 

デジタルもんじょ箱の保存対策事例に、法政大学大原社会問題研究所の『研究所ライブラリーの役割と「利用のための資料保存」』を掲載しました。

http://www.tokushu-papertrade.jp/digimon/con_case/con_case03menu.html

 

 

        研究所が入っている図書館棟

toshokantou.JPG同研究所は、実業家 大原孫三郎氏が1919年に設立し、1949年に法政大学の付置研究所になりました。

図書館蔵書の酸性紙劣化が社会的な問題になり始めた頃、担当者の若杉隆志氏は、国文学研究資料館が年一回開催する「史料管理学研修会」(2002年度より「アーカイブズ・カレッジ」)を受講したことをきっかけに研究所の資料保存に取り組みはじめました。

 

 

 

 

保存対策事例のスペースの問題で、掲載しきれなかったことをいくつか報告します。

 

 ■AV資料の保存

                                                                                        AV資料

VTR.JPGオープンリールの録音テープは、カセット・テープに変換、近年では、デジタル化(MP3ファイル形式)して保存しています。16mmの映画フィルムはビデオテープに変換しましたが、デジタル化についてはファイル形式がいろいろあり、長期保存にふさわしい形式を検討中です。オリジナルのフィルムはA-Dストリップでチェックしたところ酢酸の発生があり、対策を検討しています。

        

 

 

 *A-Dストリップ:http://www.kms.gol.com/ads/ads.htm

米国、IPI(Image Permanence Institute:画像保存研究所)が開発。日本では、国際マイクロ写真工業社などが販売。

 

■研究所のお宝

「研究所の貴重書の代表は、カール・マルクスのサイン入り『資本論』初版本(1867年刊)です。初版本は世界に100冊、日本にも48冊あり、そのうち4冊はサイン本です。しかし、本当のお宝は、戦前期の労働運動、社会運動のビラ、チラシ、ポスターなどです。ここ大原に一点しかないからです。」(大原社会問題研究所「こんにちは若杉隆志です・史料が語る近現代史」から抜粋)

http://hwm5.gyao.ne.jp/twaka/shiryo/shiryoct.html

(文責 神谷)

 

 

 

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非破壊試験による和紙の繊維判定法を開発

washisamplebook.jpg古文書や美術品など、紙を基材とした文化財の修復・研究の際、使われている繊維を調べることがあります。微量の紙片を得て顕微鏡で判定することが従来の方法でしたが、国宝や重要文化財などの場合は、破壊検査となるため、繊維判定が困難でした。

 

繊維分析研究者の宍倉佐敏さんは、代表的な原料と漉き方による比較判定紙をつくり、古文書の用紙と比較観察することにより、繊維の種類を同定する非破壊による判定法を開発しました。

 

見本帳の発売

紙の温度(名古屋市熱田区)では、比較判定紙をポケットタイプ(190mmX80mm)の見本帳にして発売しました。価格は、15,250円(税別)です。見本帳には、麻や楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)などの和紙や針葉樹パルプなど22種類の紙が入っています。それぞれの紙には、原料の産地や煮熟の方法、叩打やネリ剤の種類のデータが添えられています。漉き方や乾燥方法なども記載されており、紙漉きを担当した黒谷和紙(京都府)の林伸次氏によるコメントも含まれています。

 

「紙の修復家や研究者などの方々に活用いただきたいと思います。11月30日の和紙文化講演会でも販売予定です。」(宍倉ペーパー・ラボ 宍倉佐敏氏)

 

見本帳と同時に和紙(全紙)も発売。価格帯は1500円の針葉樹パルプ(600900mm)から2,350円の古代紙打紙(400490mm)まで。(価格は税別)

 

「宍倉さんの指導で、漉き手を林さん一人にし、紙にバラツキが出ないようにしました。制作部数は400部です。」(紙の温度(株) 代表取締役社長 花岡成治氏)

 

見本帳と和紙は、店舗で販売しているほか通信販売も。

紙の温度(株) : http://www.kaminoondo.co.jp/

 

*第16回和紙文化講演会 : ブログもんじょ箱既報

http://www.tokushu-papertrade.jp/digimon/mon-blog/2008/09/161130.html

 

 

 

 

 

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オリジナルネガのない映画の復元は?

 movie.jpg

1950年に制作され、翌年にヴェネチア国際映画祭グランプリを受賞した黒澤明監督、宮川一夫撮影の『羅生門』は、映画史上に残るモノクロ映画の代表作です。角川文化振興財団とアメリカ・映画芸術アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and SciencesAMPAS)は、このほど作品のデジタル復元を行いました。

 

オリジナルネガは、ニトロセルロース製で可燃性が高いため廃棄されており、デジタル化は、62年につくられたプリントをもとにしました。素材は、焼付時に生じたコマのガタつきやブレが顕著であるとともに、長年の映写によるキズやヨゴレも目立っていました。原版の縮みによるワープ(歪み)やスプライス(接合)後のコマに規則的に生じるスプライス・バンプ(フォーカスの乱れ)なども修復が必要でした。作品は、登場人物の主観がミステリーを呼ぶもので、撮影には、あえて硬調のネガフィルムを採用したという。コントラストを強くするために現像所でテストを繰り返したという話も残っています。

 

復元の精度を高めるためには、オリジナルネガの情報が必要ですが、現存していないため、宮川カメラマンが所有していたネガの「カット尻」を唯一の拠り所にしました。これにより、画面のコントラストが確認できました。デジタル復元は、ピクセル単位で加工できるので、逆に人為的なモノになりやすい危険性があります。できる限り真正な(Authentic)再現をめざすためには、カット尻は不可欠でした。プロジェクトには、多い時で40人のスタッフが関わったということです。

 

「『羅生門』のような著名な作品には、コストを掛けることができますが、そうでない映画の復元は難しいですね。」(東京国立近代美術館フィルムセンター 主任研究員 映画室長 とちぎあきら氏)

 

作品は、「最新デジタル映像技術が開く新世界」というイベント(1021日)と第21回東京国際映画祭(1025日)で上映されました。

 

参考資料 : 平成20年度 画像保存セミナー「画像保存の過去・現在・未来」

「デジタルを通してフィルムが見える―フィルム・アーカイビングの現場から」(とちぎあきら氏講演、2008年10月31日)

 

角川文化振興財団 : http://www.kadokawa-zaidan.or.jp/

 

AMPAS(黒澤明のページ) : http://www.oscars.org/events/kurosawa/presskit.html

 

東京国立近代美術館フィルムセンター : http://www.momat.go.jp/fc.html

日本で唯一、ナショナル・フィルム・アーカイブセンターの役割を担っており、映画の収集と、保管・安全保護、保存、復元を行っている。相模原分館では、35mmフィルムで約20万缶の映画フィルムを保存。収蔵庫の空調は24時間稼働、モノクロフィルムは、室温10℃±2℃、湿度40%±5%に、カラーフィルムと原版フィルムは、室温5℃±2℃、湿度40%±5%に設定されている。長年の劣化のため酢酸ガスを発している(ビネガー・シンドローム)フィルムについては、他のフィルムに悪影響を及ぼさないように特別の保存室を設けている。映画フィルムの保管に対応している機関は、ほかに京都府文化博物館と福岡市総合図書館など日本では数少ない。

 

センターにおける邦画の収集率は、1910年代が0.1%、1920年代で3.5%、1930年代で9.9%、1940年代で28.8%という。特に、戦前の作品は、関東大震災や戦時下の空襲などで多くを失っている。戦後の作品も、可燃性原版は皆無という。(社)映像文化製作者連盟の呼びかけで、2001年度からフィルムセンターが受入れを開始し救済が始まった。

 

近年では、商業映画だけでなく、記録映画の保存も課題となっている。民間の現像所などに眠っている「オーファン(孤児)フィルム」は主要5社だけで、5万本にのぼる。フィルムは、すでに劣化や廃棄が始まっており、保存環境の整っている機関の受け入れが急務といわれている。081027日に「記録映画保存センター」が設立され、収集と保存が始まった。ビネガー・シンドロームのフィルムも多く、近代美術館フィルムセンターが岩波映画3898本の受入を開始した。

 (文責 神谷)

 

    Asahi.comの記事 : http://www.asahi.com/culture/update/1025/TKY200810250086.html

記録映画保存センター : http://kirokueiga-hozon.jp/index.html

 

 

 

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