古文書の装備と保存

2008930日に、群馬県立文書館にて第248回の全史料協 関東部会月例会が開催され、群馬県内をはじめ、関東甲信越を中心に76名が参加しました。筆者(神谷)が月例会の事例報告をレポートします。

 

タイトル : 「群馬県立文書館における古文書の装備と保存」 

発表 : 群馬県立文書館 古文書係 指導主事 中島 潔氏

 

                                  群馬県立文書館

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■文書館の沿革(200841日現在)

1974年からの群馬県史編さんの流れを受け、19824月に文書館が設置されました。建物は、鉄筋コンクリート造、地上3階地下2階で、1994年に書庫を増築し、現在では延床面積5,765㎡(書庫面積3,056㎡)になりました。古文書の収蔵数は、320件、365,277点です。担当職員は、7名。(正規4名、嘱託1名、臨時2名)

 

 

               

 

■IPMの導入

2004年からIPM(Integrated Pest Management : 総合的有害生物管理)を導入し、補虫トラップによる定期的調査や書庫の温湿度測定、年二回の書庫清掃などを実行しています。

 

赤石正彦「群馬県立文書館におけるIPMの導入」(『双文』第23号、2006年)

 

■古文書整理の流れ

古文書の整理の流れは、下記の通りです。装備と保存については太字にしました。

搬入→燻蒸→受入目録→埃払い→補修→ラベル貼り→袋(箱)入れ→排架→古文書一点ごとの内容点検→仮目録作成→閲覧利用→分類目録・多角的検索手段の作成

 

1)搬入と燻蒸

公文書については、モニタリングを実施して、虫が発見されなければ燻蒸しないことを検討中です。寄贈・寄託された古文書は燻蒸しています。燻蒸は殺虫・殺菌を目的に行います。薬剤は、酸化エチレン製剤を使用。1回の燻蒸期間は約2週間です。

 

 

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       搬入された文書類                   燻蒸庫

2)受入目録の作成

目録担当は1名で、請求番号から保管場所などの11項目をデータ入力しています。

 

3)埃払い・補修

埃払いや補修は2名で行っています。一点ずつ製図用の刷毛で埃を払い、クリップやホチキス(ステープラー)、セロテープ、輪ゴムなどを除去。継紙の継目が剥がれかかっている場合は、「糊さし」を実行、綴じ紐が切れたり、取れかかっているときは、補修用糸や紙縒(こより)で綴じ直ししています。虫損や破損が著しい資料は、コピーで複製を作成。補修記録も同時に記入しています。裏打ちのように、原型を大きく変える場合は、目録や保存用封筒に記録します。

 

 

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         ほこり払い                     補 修 

4)ラベル貼り

ラベルは、古文書になじみやすい和紙(楮)を使って文書一点ごとに貼付、糊はCMC(カルボキシ・メチル・セルロース)を使っています。

 

5)袋入れ、箱入れ

保存用封筒には、無酸・弱アルカリの中性紙を使用し、資料の大きさによって4種類を用意。保存箱も同様の品質で、組立式の中性段ボール箱を使っています。封筒には、受入番号や文書番号のほか古文書の状態、複製物による閲覧対応なども記入し、保存箱に縦置きで収納しています。保存箱には、文書名や文書番号を記入しています。複製物の場合は、出納担当者にわかりやすいように色つきの紙を箱の中の一番上に置いています。

 

               箱入れ

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6)排架

資料は、受入れ家別順、文書番号順に排架しています。書庫環境は、委託業者が空調管理しており、設定の温湿度は、夏が20~22℃・55%RH、冬が1820℃・55%RHですが、場所によって多少のばらつきがあります。

コスト面で,夜間は空調を停止していますが、今のところ温湿度の大きな変動はありません。

IPM対策として、害虫トラップを配置したり、出入り口に粘着マットを置いています。デジタル温湿度計でモニタリングもしています。電灯は、紫外線防止用蛍光灯を使い、消火設備は、本館でハロゲン化物、新館で二酸化炭素を導入しています。

 

■課題

職員削減や予算減少の問題を抱えており、古文書の整理全体を見直しし、合理的・効率的な整理方法の構築をすることが課題です。

 

1)書庫環境の把握

一部の書庫で、夏場の湿度が70%RHを超えることがありカビの発生に注意しています。4月に、本館書庫の非常階段でカビが広範囲に発生し、改善を図りました。カビなどの予防に、日常の観察や委託業者との情報交換を大切にしています。

 

2)装備未完了文書の整理

200741日現在のデータを基にした資料の公開率は、全収蔵点数約36万点のうち42.7%と低く、装備未了の文書が116,200点と、まだ全体の3分の1なので、いずれも改善しなければなりません。特に、点数の多い文書群は後回しにされやすいので、長期と短期を複合させた計画の立案を検討しています。

 

3)新旧保存用具の混在

受入時の段ボール箱や古い(酸性紙の)保存箱や封筒が、中性紙の封筒や保存箱と混在しています。これらは、閲覧公開や新規受入などの際に、随時中性紙製に変えていきます。

 

4)作業の効率化

仮目録点検に時間がかかっているので、受入目録の完成段階での閲覧公開など改善策を検討しています。特に、点数が少なく閲覧公開に問題のない資料は、積極的に公開していきたい。大規模な文書群も、比較的整理の容易な文書から百点、数百点単位で順次公開することを考えています。

 

5)多種多様な紙の劣化への対応

和紙や洋紙、青焼き、こんにゃく版などのうち劣化が始まっている資料はコピーなど複製をつくっていますが、封筒や保存箱、書庫の空調管理などの環境改善だけでは劣化抑制が困難です。退色が懸念される資料については、受入目録作成時に状態をメモしておき、定期的に経過観察をしていく必要があります。

 

6)目録作成の際の目録の採り方やラベル貼付方法

束になった書簡や領収書、メモなどは1点として扱うのか、ばらして1点ずつ目録化するのかなど、さまざまな状態の文書の目録化と最善のラベルの貼り方が課題になっています。(文責 神谷)

 

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書庫(棚板と保存箱の隙間を少なくし、ホコリがたまりにくいようにしている)

 

参考文献:

中島 潔 「古文書の装備と保存における現状と課題」

―群馬県立文書館の場合―(『双文』第25号 2008年)

 

 

 

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