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HOMEデジタルもんじょ箱保存対策事例>法政大学大原社会問題研究所 研究所ライブラリーの役割と「利用のための資料保存」

保存対策事例

保存対策事例 第3回(2008.10.29) ▲保存対策事例トップへ
法政大学大原社会問題研究所 2/3 利用のための資料保存

研究所ライブラリーの利用状況

法政大学大原社会問題研究所の図書資料は、来館(館内閲覧、館外貸出、複写)非来館(複写、学内相互協力利用など)サービスのほか、刊行物・ホームページ・マスコミへの提供、展示会への特別貸出などで広く利用されています。
所内研究員の利用をのぞくと、学内外の利用比率は3:7で学外の方が多いです。利用頻度が高いのは、戦前期の社会運動の資料類、基本となる戦後期資料です。

利用を前提とした資料保存の工夫

研究所では、利用頻度が高く劣化が進んでいる資料を「保存ニーズ」が高いと判断し、1990年頃から中性紙の容器(箱・封筒など)に入れたり、脱酸・修復処置をしてきました。
資料保存にかけられる年間予算は限られているので、「すぐできること」「将来やること」「お金ができたらやること」をリストアップして、貴重書の容器入れ、修復・脱酸、保存環境の整備などから始めました。大切なのは、個々の資料がどうしたら利用しやすいのか考え、実行することだと思います。

ポスターの処置

研究所には約5000点の戦前・戦後のポスターコレクションがあります。必要なポスターには脱酸処置をしたのち、全点フィルム・エンキャプシュレーションを行いました。

PETフィルムにポスターを入れ両面テープで留める。通常4辺を密封するが、研究所では出し入れがしやすいよう、片側をL字に両面テープで留め、右端を1点留めにしている。

エンキャプシュレーションのフィルムはPETフィルム*、A4など小さな資料はPP(OPP)フィルム**の袋を使っている。

■利用頻度の高い資料 処置の例

▲中性紙の容器入れ
中性紙の箱を作成し、創立直後にヨーロッパで購入した古典籍を入れた。主な貴重図書はすでに入れ終わっている。


▲貴重書の修復
箱入れの際、劣化の激しい本は修復に出した。写真は、マルクスのサイン入り『資本論』初版本。


▲脱酸・修復処置
ここ数年は、脱酸・修復技術が進化してきたので、直筆のノート、原稿などの脱酸・修復を行っている。写真は、片山潜原稿『在露三年』。

直に手で触れると、ポスターを損傷しかねません。透明フィルムに入れたことで扱う際の負担が格段に減りました。マップケースで保管し、このまま展示することもできます。

ポスターは、デジタル化して画像をインターネットでも公開しています。検索・利用対応することで原物に触れる機会をより少なくすることができたそうです。



▼大原デジタルミュージアム
http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/museum/index.html

利用しやすい媒体変換


紙質が悪い、冊子形態など、閲覧やコピーの度に気をつけるべき資料があります。媒体変換、というとデジタル化を想定しがちですが、「アナログコピー」が利用しやすいそうです。



占領期の資料は紙質が悪い、しかし利用頻度は高い、ということで思いつきました。デジタル化も検討しましたが、手間・コスト・その後の利便性など考えると良いのではないか、と思います。利用のあった資料を優先してコピーし、そのほかの資料は手の空きを見ながら順に作業します。閲覧用にはコピー、原物は展示など必要な場合に利用できれば、と考えています。

2007年度に行った媒体変換作業は、次の通りです。
・劣化が激しい占領期「産別会議資料」のコピー作成
(前年度に引き続き行っています)
・戦前期資料のマイクロフィルムから閲覧用のプリントを再度作成開始
 (これまでの閲覧用プリントが経年劣化したため)

マイクロフィルム自体に劣化が見られますが、コストと利用ニーズの兼ね合いから当面はPETへの複製はせず、巻替え・放酸作業・容器交換で対応しています。
(3へつづく)

*PET フィルム
正式名 ポリエチレン・テレフタレート
一般名 ポリエステル
** OPPフィルム
正式名 オリエンテッド・ポリプロピレン
一般名 ポリプロピレン

PPフィルムには二種類ある。
OPPフィルム:二軸延伸ポリプロピレンフィルムのこと(強度は弱いが、伸びがあり破れにくい)
CPPフィルム:無延伸ポリプロピレンフィルムのこと(強度はあるが、引き裂きには弱い)

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