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HOMEデジタルもんじょ箱保存対策事例>法政大学大原社会問題研究所 研究所ライブラリーの役割と「利用のための資料保存」

保存対策事例

保存対策事例 第3回(2008.10.29) ▲保存対策事例トップへ
法政大学大原社会問題研究所 1/3 研究所の役割
法政大学大原社会問題研究所は、社会・労働問題の研究機関として調査・研究はもとより、出版物の刊行、国際交流、Webサイトでの情報発信など多岐に渡って活動しています。

今回は「利用資格を問わず誰もが図書・資料を閲覧利用できる」という研究所のライブラリー活動に注目し、収蔵品の「利用を前提とした保存」について、若杉隆志氏に伺いました。

研究所設立の経緯

1919(大正8)年、大原孫三郎氏は大阪天王寺に研究所を設立します。そのきっかけをたずねました。
孫三郎は貧困児童を対象にした夜学校を経営するなど、社会事業に熱心でした。しかし、社会問題の解決に応急的な救済事業では不十分であり、根本の研究を組織的に行う必要があると考え研究所を創立します。前年の内閣を倒すまでに大きな社会運動となった米騒動も契機の1つとなったことでしょう。


初代所長には東京帝国大学経済学部教授の高野岩三郎氏が就任。彼のもとにすぐれた研究者たちが集まり、創立直後から『日本労働年鑑』などの編集・刊行を開始しました。
研究活動や年鑑編集のために収集・購入した国内外の図書や資料を、研究目的だけでなく、ひろく一般に公開しました。1924年のことです。図書館史にも研究所ライブラリーが学術図書館として当時の大阪府民に利用されていたことが伺えます。

ライブラリー活動は創立時より研究所の重要な柱となりました。しかし、1937年、大原氏より財政援助が打ち切られ、研究所は土地建物、蔵書8万冊を大阪府に売却し、規模を縮小して東京へ移転。戦中・戦後の厳しい時代を経て、1949年、法政大学と合併し現在の法政大学大原社会問題研究所となります。名称と活動スタイルは基本的に継承され、今日に至っています。



▲大原孫三郎(1880-1943)
岡山県倉敷の実業家。倉敷紡績、中国合同銀行などの社長を務める一方、社会・文化事業にも取り組む。倉紡中央病院、大原美術館など。


▲大阪天王寺時代の研究所



▲37年に移転した東京市淀橋区(現新宿区)柏木の土蔵。空襲で一棟だけ焼け残る。 貴重書・原資料は消失をまぬがれる。

所蔵図書・資料について

研究所が所蔵する図書・資料群の概要は次の通りです。

・図書 
社会・労働問題に関するもの中心。和書約12万冊、洋書約5万冊。
・逐次刊行物
『日本労働年鑑』編集用に収集したもの中心。労働組合・政党・諸団体の機関紙誌など約1万タイトル。
・原資料
労働組合・農民組合関係記録、無産政党資料、裁判記録、米騒動資料など。そのほか、写真、各種ポスター、バッジ、旗、映像フィルム、音声テープなど。

各資料群の特色と、管理についてたずねました。
図書は、社会運動家の伝記、遺稿、労働組合史など非売品の収集に努めています。マルクス経済学、社会思想等に関する貴重書もあります。

逐次刊行物は、労働運動・社会運動関係の機関誌紙を中心に、継続的に受け入れています。

そして原資料です。「文化財」のような貴重資料ではありませんが、近現代の社会運動を語る生資料です。私たちの父母、祖父母、曽祖父母たちが、日本の近代化から戦争を経て高度成長を迎える中で、人々のくらしと権利をまもるために闘った組合運動、農民運動、政治運動の記録です。

資料類の管理は、戦前期と戦後期に分けて行っています。
戦前期は・量が少なく・社会運動全般・多くは購入、
戦後期は・量が多い・労働運動が中心・ほとんどが寄贈、
という特徴があります。

研究所が多摩キャンパスに移転したのは1986年。書庫と閲覧スペースを得て、これまで以上にライブラリー活動の充実を図る。研究所外では、紙資料劣化の調査・研究が盛んになる。近現代の紙資料を多く所蔵する研究所でも、「利用」と「保存」の調整が重要な課題となりました。
規制・弾圧や戦火などの困難をくぐり抜けた資料群をできるだけ長く良い状態で保存する、と同時に広くユーザーの利用に供する、それが資料をつくり、収集し、保全してきた先人への責務である―という研究所のスタンスがありました。資料保存は、研究所の歴史・存在意義そのものと深く関わるテーマだったのです。

(2へつづく)



図書・資料は年代・種別や形態に応じて閉架式書庫に保管されている。貴重書・戦前期資料書庫の蛍光灯は紫外線除去のものに取り替えた。

▲貴重書庫
主に戦前の貴重書を保管。

▲戦前期資料書庫
主に戦前の資料を保管。

▲通常書庫
主に戦後の図書・資料を保管。
*通常書庫は予算の都合上紫外線除去の蛍光灯に取り替えられなかった。不要な照明はつけないようにしている。

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