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HOMEデジタルもんじょ箱保存対策事例>ちひろ美術館 水彩画の保存と保存的展示

保存対策事例

保存対策事例 第2回(2008.04.01) ▲保存対策事例トップへ
ちひろ美術館 3/3保存的展示とちひろ美術館の今後

保存と一体となった展示


ちひろ氏の作品を集めた展示室1へ足を踏み入れると、照明が落ち着いていること・目線が低くなることに気がつきます。
ちひろの作品・ゆかりの品々を紹介する展示室1と2は60ルクス以下、世界の絵本などの展示室3.4.5は80ルクス以下と多少明るくなっています。子どもの目線を配慮して、作品を展示する高さは135cmにしています。

作品と子どもたちにやさしい展示。光源はハロゲンランプで照度を抑え作品への影響を少なくしています。前述した展示の「保存額装」や、作品を休ませるための展示替えなど、ちひろ美術館では保存と展示が一体となっています。安曇野では、ちひろ美術館・東京と同様に随所に環境整備の工夫が施されています。
ガラス扉には、紫外線カットフィルムを貼りました。展示室の入り口にはエアカーテンを設置し、室外からの影響を少なくしています。温度は18〜20℃前後、湿度は50〜55%で24時間管理しています。温湿度は、自動式記録計で各部屋をモニターし、同時にセントラル空調システムでも記録をとっています。

・紫外線カットをしたガラス扉 ・温湿度の計測

実物展示にも工夫が施されています。ちひろ氏の遺品を展示しているエアタイトケースにはアートソーブ(調湿材)とパナプレート(業務用気化性殺虫剤)を装備。写真アルバムなど原物資料を展示するアクリルケースには、中性のブラックボードを用い、作品を支える「枕」も、中性ボードの手作りです。

・エアタイトケース内 ・実物展示のアクリルケース

どれ程努力しても作品の経年変化はゆるやかに、けれど確実に進行するものです。そのため、ちひろ美術館では、現在、ちひろ氏の作品のアーカイブズを進めています。さらに、そのデータを活かして、代表作はピエゾグラフ(エプソン)と呼ばれる高精度の再現技術で原画の質感を再現した複製を作成しています。

安曇野ちひろ美術館・5つの展示室のテーマは次の通り。
1.ちひろの仕事(初期の作品〜代表作など)
2.ちひろの人生(ゆかりの品々や影響を受けた画家の作品など)
3・4.世界の絵本画家(29カ国172人の画家の作品より展示)
5.絵本の歴史(イラストレーションの歴史に関わる作品・資料を展示)



▲展示室1



▲展示室3



▲展示室3.4.5がある絵本館の入り口
外気の影響を抑えるため風除室を設けている。

今後の課題

ちひろ美術館の今後の課題についてたずねました。
保存とは、「絶対にやってはいけないこと、やらなければいけないことを明確にすること」だと思います。そのためにも、保存技術の進展に遅れないよう情報収集をし、常に作品に向き合うことを皆で心がけています。
保存の分野に完ぺきはありえません。コレクションは増えますし、何より経年変化が相手ですから。
充実した作品保存を継続してゆくためには、専門知識とともに、美術館全体をマネージメントできる人材の育成が必要だと考えています。



自宅の一角から始めた小さな美術館が多くの人に支えられて成長してきた、と語る竹迫氏。

これまで学んできたことを保存や展示に生かし、作品を未来に伝えたいという使命感。そのためにも、けして潤沢とはいえない経済基盤を作る努力も不可欠、と。




美術館の雰囲気はやわらかく、職員の方々の誠実な取り組みが大変印象的でした。子どもたちと未来のために、という館の理念が保存活動に息づいていることを感じました。ありがとうございました。
(取材日2008年3月6日 於安曇野ちひろ美術館)















取材協力
上島史子氏(ちひろ美術館・東京)
宍倉恵美子氏(安曇野ちひろ美術館)

ちひろ美術館・東京
〒177-0042 
東京都練馬区下石神井4-7-2

安曇野ちひろ美術館
〒399-8501
長野県北安曇郡松川村西原

画像の無断転載を禁じます。

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